福島第一原発は福島県の太平洋岸に位置し、双葉郡の大熊町と双葉町にまたがるエリアに建設されています。
350万平方メートルの敷地の中に、6基の原子炉が置かれています。
その福島第一原発は2011年3月に起きた東日本大震災の際に、運転中だった3基の原子炉が自動停止し、それと同時に原子炉を冷やし、放射能を閉じ込める作業が開始されました。
ここまでは想定通りの動きでしたが、津波の影響ですべて電源が停止し、その結果、原子炉を冷やすことができなくなり、大きなダメージを受けました。

当初想定された津波の高さの倍以上

これは、当初想定された津波の高さが6.1メールとだったのに対し、この度の津波は13メートルと倍以上となり、建物内には15メートルの浸水があったとされています。
そのため、原子炉建屋やタービン建屋なども浸水し、原子炉などを正常に稼働させるための電源盤も浸水し、非常用の発電機も停止することになりました。
また、非常時に原子炉の冷却に使われる海水ポンプも冠水してしまった結果、原子炉内部の熱を海水で冷やすこともできなくなります。
そして、原子炉内に冷却用の水を送り込むことができなくなったことで、原子炉内の水位が低下してしまい、本来冷やさなければならない燃料棒が露出するようになりました。
その状態が長く続いた結果、燃料を覆っていた金属部分が高温になり、原子炉内にたまっていた水蒸気と化学反応を起こしていきます。
このことで、原子炉内に燃料が溶け、大量の水素が発生して爆発が起きました。
特に1号機と3号機の原子炉建屋が大きく破損したことはテレビなどでも大きく取り上げられました。

爆発は免れたものの、大気中に放射性物質が大量に放出されることに・・・

また、格納容器の圧力が上昇した時に、内部の気体を排出する「ベント」と呼ばれる作業も思うようにできなかったため、爆発は免れたものの、大気中に放射性物質が大量に放出されることを許します。
事故の直後からは高温になってしまった原子炉を冷やすため、様々な作業が行われました。
ヘリコプターによる放水や、消防車を動員しての注水が行われたことはメディアによって伝えられたとおりです。
さらに、原子炉冷却のために使用される水は汚染水となりますが、それらの汚染水から放射性物質を取り除いて、ふたたび注水用の水として利用するための循環型の注水冷却システムを作って稼働させることで、事故から約9か月後の2011年12月には、原子炉の圧力容器の底の温度がほぼ100度と放射性物質の大量放出が抑えられるレベルに達しました。
そのため、原子炉が冷温停止状態になったとされ、それ以降も注水を続けた結果、同様の状態が維持されています。
福島第一原発は事故後、30年から40年の歳月をかけて廃炉とすることが決定されました。
そのためには、原子炉内に溶けて固まっている燃料デブリを取り出し、原子炉建屋の内部の構造物を解体・撤去する作業が必要になります。

汚染水対策とともに建物内部の放射性物質の量を抑えること

具体的な工程の中で大切になるポイントは、汚染水対策とともに建物内部の放射性物質の量を抑えることです。
そうしない限り、安全に作業することができないからです。
それらの懸念点が払しょくされてから、燃料の取り出しを開始します。
対象となっているのは、震災当時に稼働していた1号機から3号機です。
その後に行われるのが、原子炉内部に溶け落ちた燃料デブリの取り出しです。
その作業が終わってから、作業時に出た廃棄物の処理や処分がされます。
これらの作業工程の内、2020年の段階で特に注視されているのが、汚染水問題です。
汚染水に含まれる放射性物質を取り除いて、再び注水作業に使える水とするシステムは確立していますが、原子炉の建屋が破損していることなど様々な要因で、全ての汚染水を完全に回収することが難しいため、新たな汚染水が発生しています。
それで、国が主導する形で汚染水を外に漏らさない・建屋内の汚染源に近づけない・発生した汚染水に含まれる放射性物質を取り除いて確実にリスクを下げる対策が敷かれています。
具体的な取り組みとしては、特に地下水を建物などに近づけないことに主眼を置いて行われているようです。
例えば、敷地の山側の高台に井戸を設置し、建屋の手前で地下水をくみ上げ、放射性物質の濃度を測定し、基準を下回ることを確認してから排出しています。

まとめ

地下水をくみ上げるための井戸は、建屋近くにも設置され、同様の検査が丁寧に行われているようです。
また、敷地をモルタルなどを舗装することで、雨水が浸透して地下水になることを防御しています。
さらに、建屋の周辺を取り囲む形で地中に冷却材を送り込むための凍結管を設置し、周りのエリアとの間に凍結した壁を作ることで地下水を流入させないようにしており、効果が上がっているようです。
それらに加え、建屋の損傷部分から雨水が入ることがないように、補修工事を同時並行で行っています。
廃炉に向けた戦いは長期戦です。
さらなる自然災害への対策も行いつつ、丁寧で着実な歩みが必要になっていくことは間違いありません。

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