通訳というお仕事について
大学の工学部を卒業し神戸市に本社を持つ貿易会社に入社し10年目になります。
海外出張が多く欧州の造船所に日本の優秀な機器を納入しています。
私と同じように日本からの営業マンも多く、同じホテルに宿泊し軽く飲む事も有ります。
ドイツに滞在中にある大手総合商社の営業部長から夕食に誘われました。
私と彼等とは取り扱う商品が違う為頻繁に食事会を開催するのです。
話題はいつも客先の設備投資の動向です。
今夜はいつもと違いフランス料理のレストランです。
地元ドイツ料理と比べて美味しく人気のレストランは予約を入れるのに苦労するのです。
営業部長からいきなり給料を聞かれ、大学時代の専攻を聞かれ、全く何時もの気さくな雰囲気ではないのです。
その内に転職の話となり最後は引き抜きに近い話になって来ました。
話の内容が単なる求人、転職ではなく具体的なあるプロジェクトに是非とも来て欲しいとの事でした。
帰国し自宅で嫁と相談しました。
嫁は貿易会社の同期入社の女性で私より英語が堪能でした。
彼女は話を聞くと私の好きな様に行動してほしいとの事でした。
部長との約束に基づき某商社の求人広告を待ち、履歴書を送りました。
直ぐに面接日が決まり人事部の担当者に依る面接試験が始まりました。
1週間後に人事部から連絡を受け採用に
特技、英語の検定試験、趣味、会社に入ってやりたい事等の質問を受けその日は終了しました。
それから1週間後に人事部から連絡を受け採用になりました。
直ぐに貿易会社の退社手続きを行いましたが、役員から呼び出しを受け事情を聴かれました。
私はやりたい仕事が見つかり、それに専念したい旨説明し了解を得ました。
新しい会社に出社し人事部から工場勤務の辞令を貰いました。
その内に工場長が人事部に来られ、仕事の内容の説明を受けました。
大手総合商社が持つ工場とは船舶用の機器の修理工場で欧州から輸入した機器の修理を我が国で行いアフターサービスの売り上げ増大計画を目指すものでした。
既に何人かの外国人技術者が勤務して居り、当面は通訳の仕事が中心となります。
工場勤務は初めてなので慣れるまで苦労しました。
ある日私に声を掛けて呉れた営業部長が工場に来られ、私が得意としていた舶用機器の取り扱い実績を評価し工場に来て欲しかったの説明を受けました。
確かに前の会社時代に取り扱った機器と略同じであり、自分の得意とする分野なのです。
外国人エンジニアと協力して工場の品質管理体制の見直し作業を行い、我が国ナンバーワンの自動車メーカーの品質管理体制を勉強しこの工場用に作り直しをしました。
小さい組織なので通訳以外の仕事もこなし工場の勉強もできた
指示された仕事の内容は通訳ですが、小さい組織なので通訳以外の仕事もこなし、工場の勉強も出来ました。
徐々に機器修理の実績もつき始め売り上げも伸びてきました。
最近では船会社のお客様に依る工場調査が頻繁に行われ私と外国人エンジニアは工場長のサポート役として常に声が掛かるのです。
この時は通訳に徹しお客さが納得いかれるまで説明します。
休みの日には車で1時間の嫁の実家までドライブします。
嫁の両親も私の転職に心配したと言われました。
嫁と義理の母が料理を作り、私と義理の父はゴルフ練習場に行きドライバーに磨きを掛けます。
帰宅後お風呂に入りその後美味しい夕食を全員で頂きました。
ビールが美味しく、焼酎の湯割りまで頂き、話が弾みます。
転職してこの様な時間が取れ感謝しています。
貿易会社時代には想像も出来なかった生活なのです。
現在の仕事は工場の通訳ですが、チャンスが有ればもう一度海外ビジネスに挑戦したいと考えています。
それには今一度工場で勉強し技術の基礎を固め、今度はセールスエンジニアとして檜舞台に立ちたいと考えています。
その夢が実現しますように今朝の散歩の時祈りました。